【4】小寒の行事・イベント・風習
小寒は「寒の入り」となり、「七草粥」を食べたり、「寒中見舞い」を出すなど、古くから伝わる風習が数多くあります。
小寒の時期に行われる行事や風習をご紹介します。
○[おせち料理]…正月料理の代表。黒豆・数の子・伊達巻・エビ・鯛など、縁起の良い物が重箱に詰められています。
正月のおせちは,新しい年の神様である「年神様」への供物であり,それを一緒に味わうことで,一年の幸せを願います。
めでたさを重ねるということで,縁起を担ぎ,重箱に入れました。
食材や料理も、子孫繁栄を表す「数の子」、勤勉さを表す「黒豆」、豊作を表す「田作り」、長寿を表す「海老」、喜ぶ(養老昆布)で「昆布」、金運を表す「栗きんとん」など、おめでたい、縁起を担いだものになっています。
その年の幸せを味わい、良い一年にしていきましょう♪
・[歴史]…平安時代、朝廷では季節の変わり目のお祝いの日「節日(せちにち)」に「節会(せちえ)」という行事が行われていました。
そこで出される節供(句)料理のことを「御節供(おせちく)」と呼んだのです。
後に「おせち」と略されるようになり、一月一日の元旦は別格扱いとされ、節日の一番目にあたる正月料理を「おせち」と言うようになったと言われています。
○[お雑煮]…数ある正月料理のうちの一つで、古来より正月に食べられてきました。
お雑煮の語源は「色々な具材を煮合わせる」という意味の「煮雑(にま)ぜ」からきていると言われており、正月に帰ってくる歳神様にお供えした餅や人参・大根・里芋などを煮込んで新年に食べたことが始まりと言われています。
○[お汁粉]…お雑煮と同じく,正月に欠かせないおもち料理の一つです。
お雑煮と同様に、歳神様にお供えした餅を食べる方法として,お汁粉が考えられたと言われています。
粒あんの物は「ぜんざい」と呼ばれることもあります。
※「歳神様にお供えした餅には力が宿る」とされ、「鏡開きの日に割って、それを食べることで力を得ることができる」と言われています。
❶[松の内]
お正月も三が日を過ぎると、晴れやかさも落ち着き日常生活に戻っていきます。
門松や正月飾りも七日迄で、正月の七日迄を「松の内」と呼ぶのはここからきています。
かつては松の内は正月十五日の小正月までを指していましたが、現代では七日までを指すのが一般的なようです。
関東では7日までを「松の内」と言い、この7日に健康を願って、春の七草を入れた「七草粥」をいただきます。
ちなみに関西では15日までが「松の内」です。
①[七草粥]
小寒に決まった行事食はありませんが、「人日(じんじつ)の節句」の1月7日に邪気を祓い、無病息災を願い,春の七草を入れた「七草粥」をいただく習わしがあります。
春の七草とは、セリ、ナズナ(ぺんぺん草)、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ(コオニタビラコ)、スズナ(蕪)、スズシロ(大根)です。
秋の七草の「草花」と違ってではなく、「草」です。
七草粥は、凍りついた大地から芽吹く若芽を食べることで、その年一年の無病息災を願う日本の伝統行事です。
寒さが厳しくなるこの時期に,身体の内部を温め、消化の良い七草粥を食べることで、冬に負けない英気を養っていたのかもしれません。
現在では年末年始のご馳走(豪華な食事]に疲れた胃腸を休めるためや無病息災を願うものとして食べられています。
春の七草と呼ばれる野草や野菜を刻み入れ、餅をいれて炊いたお粥のことを言います。
味は、塩で軽く味付けをするため、滋味の効いた優しい味わいです。
↓詳しくは
②[寒中見舞い]は…一年で最も寒さが厳しい時期に、親戚や友人、知人などの体調を気遣うために出す手紙のことです。
年賀状は松の内(1月1~7日、地域によっては15日迄)に出すものなので、松の内を過ぎたら節分までの間「寒中見舞い」として送ります。
寒中見舞いを出すのは、1月7日迄の松の内が明けてから節分(小寒・大寒)迄の間と言われています。
南天の赤い実に積もる雪は,寒中見舞いの絵柄でもおなじみで,現代では年賀状の代わりに送る新年の挨拶として定着しています。
冒頭に「寒中お見舞い申し上げます」と書きますので,寒さが厳しい時期ならではの相手の健康を気遣う言葉を添えましょう。
自分が喪中の時に年賀状をくださった方への返信や喪中の方へのご挨拶も寒中見舞いを活用するとよいでしょう。
いずれの場合も、余った年賀はがきを使うのはNGです。
喪中のため年賀状を出せなかった場合や、年賀状の返事としても使われます。
寒中見舞いを出す時期は小寒を迎えた頃からですから、なるべく遅くなりすぎないようにしましょう♪
③[寒の内に身体を鍛える習わし]
寒くて動くのが億劫になりがちですが、昔から寒の内に身体を鍛える習わしがあります。
「寒稽古」「寒中水泳」など寒の時期に鍛錬すると,心身共に向上するとされたためです。
三味線や長唄などの芸事でも、この時期の練習は身につくといわれ、「寒復習(かんざらい)」、「寒声(かんごえ)」、「寒弾き(かんびき)」等と呼ばれています。
④寒の仕事
寒の時期には、寒い時期ならではの食文化もみられます。
氷餅や凍み豆腐・寒天・酒・味噌作り等の食物を仕込む ”寒の仕事” が始まります。
⑴[寒の水]…手が切れるほど冷たい「寒の水」は、清らかで霊力があると考えられ,厳しい寒さで雑菌も繁殖しにくいため,長期間腐らないと言われ,汲み置きをして,薬や料理に使う家もありました。
人気が高いので、多くの水の産地では 寒の水をボトリングして販売をしているほどです。
「寒中の水は冷たく透明感があり、腐らない」と言われていて、薬になるほど身体に良いと信じられていました。
特に寒の入りから9日目に汲んだ水は「寒九の水」と呼ばれて、特に貴重なものとされ、薬を飲むのに使うと良いといわれていました。
・[寒餅]…寒の水でついた餅のことをいいます。
⑵[「寒仕込み」「寒造り」の日本酒、醤油、味噌等]は寒の水で雑菌も繁殖しにくい上、発酵もゆっくり進むので、味に深みが出ると珍重されるようになりました。
日本酒は水の質も良く、気温も低い寒中が日本酒を作るのに適していたので、主に冬に作られます。
⑶その他にも「寒蜆(かんしじみ)」「寒海苔」「寒卵」などがあり、「寒の時期のものは上質で栄養価も高い」といって,昔から喜ばれています。
・[寒卵]は寒中にニワトリが生んだ卵のことで、「栄養が豊富で、美味しく、しかも、腐りにくい」と言われています。
その上、「金運が上がる」と言われていますので、とても人気があります。
卵の栄養価が高いために、寒卵は黄身の色が濃くなると言われています。
黄色は風水では金運を上げる色なので、普通の卵を食べるよりも、金運を上げる効果が高いと考えられています。
金運を上げるためには、健康で元気に働けることが大切になりますので, 栄養価の高い寒卵を食べることと金運を上げることにはつながりがあると思います。
⑷「この時期に晒(さら)した食べ物は味が良く,染め物の色は鮮やかである」と言われていて,「寒晒し」や「寒干し」と云った言葉も生まれました。
㈠「白玉粉」「蕎麦」「寒天」は寒晒しをされる食品の代表と言えます。
㈡「飛騨染め」や「郡上本染」などの染色でも「寒ざらし」を行うことにより, 生地が引き締まり,色が鮮やかになります。
このように,つい私達は冷たく乾燥した寒中の空気を嫌いがちですが、自然というのは厳しい面、嫌な面だけではありません。
昔は暖房設備が不十分で,今よりも寒くて大変だったでしょうが、上記のように,寒からたくさんの恩恵も受けています。
水だけではなく、冷たく乾燥した寒中の空気も、美味しい食べ物を作り、人間の役に立っています。
昔の人達はそこをきちんとわかっていました。凄いですね♪
現在の私達も見習うべき点が本当にたくさんあります。
⑤その他寒にまつわる言葉
○「寒太郎」…寒の入りから一日目(寒の入り当日)
「北風小僧の寒太郎」という歌が出来る前から一部で使われていた言葉で、寒の入りを擬人化した言葉といわれています。
北海道の夕張市では「ゆうばり寒太郎まつり」と命名されている冬の祭りがあります。
○「寒四郎(かんしろう)」…
小寒(寒の入り)から4日目。今年は1月8日。
麦の厄日(この日の天候がその年の麦作の収穫に影響がある)とされ、晴れれば豊作、雨や雪だと凶作だったのだそうです。
○「寒九(かんく)」…小寒から9日目。今年は1月13日。
この日に降る雨は「寒九の雨」と呼ばれ、「豊穣の兆し」という言い伝えがあります。
ちなみに、「寒九の雨が降る年は春が近い」そうです。
また、この日に汲んだ水を「寒九の水」といい、寒の内の水は雑菌が抑えられ腐りにくく、中でも『「寒九の水」は薬になる』とまで言われていました。
➌[十日戎(とおかえびす)]
七福神の一人である「戎神」を奉る、年初めのお祭りです。
参拝者は笹に小判や米俵などの縁起物をつけ、商売繁盛を願います。
また、福を集める熊手やざるなども売られています。
➍[鏡開き]…鏡餅を切る行事。
1月11日に関東で行われ、1月20日に関西で行われ,関西と関東で時期が違います。
(関東では1月7日に、関西では1月15日に松飾りをはずし、どんど焼きで,お正月の飾りものを焼いて、歳神様を天に送ります。)
正月に歳神様をお迎えした注連飾りや鏡餅(お飾りのお餅)を降ろし、お正月に丸いお餅を重ねて、その上にみかん(本当はダイダイ)などを乗せた鏡餅をいただく日です。
お供えしていた鏡餅をおろし、お雑煮やお汁粉にして食べ、一家の円満と繁栄を願います。
鏡餅は硬いので、水に浸けてからお汁粉に入れたり、揚げ餅にすると、美味しくいただけます。
その際、神聖なものなので、包丁などの刀で餅を切るのは縁起が良くないとされますので、木槌などで叩いたりして,割るようにします。
また「鏡開き」とは、「切る」という忌み言葉を避けて,「開く」という縁起の良い言葉に代えています。
こうして、年神さまに捧げられていた鏡餅が下げられ、その形が崩されることで、完全にお正月の終わりを意味するのだそうです。
ちなみに「鏡餅」は歳神様の依り代で、あの丸いお餅は三種の神器の一つ「八咫鏡(やたのかがみ)」をかたどったものだそうです。
鏡餅の上の乗せるダイダイもやはり三種の神器の一つ「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」をかたどっているそうで、畏れ多いものなのです。
子供の頃から続く習慣として無意識に受け継いでいましたが、天照大神の神話につながる伝統です。
❺[成人の日・成人式]…
その年度内に満20歳を迎える新成人を祝福するための行事。
かつては国民の祝日として1月15日に固定されていましたが,ハッピーマンデー制度により2000年から1月の第2月曜日が成人の日になりました。
2021年の成人の日は1月11日(月)です。
成人の日には成人式が自治体によって行われますが、これらは日本独自の文化となっています。
地方によっては,県外などに出ていることも多いことから、年始やお盆などの帰省に合わせて行うケースもあります。
古くは数え年15~17歳で成人の儀式を行っていましたが,現在のような行政主導で成人式が行われるようになったのは、昭和21年(1946年)埼玉県蕨市が最初だったと言われています。
日本の若者が今も,着物や袴姿で,違和感なく成人式や卒業式に出席できるというのは日本の伝統が断ち切られなかったということで,とても素晴らしいことだと思います。
正月に飾った門松や注連飾りなどを燃やす行事のことです。
一般的には1月14日の夜、もしくは15日の朝から火を焚き始め、この煙に乗って歳神様が山に帰ると伝えられています。
「どんど焼き」「道祖神(どうそじん)祭り」など地域によって呼び方は様々です。
❼[小正月(こしょうがつ)]
1月15日もしくは、14日~16日の3日間を意味する言葉で,元日から1月7日までを「お正月」と呼ぶことに対して、この期間を「小正月」と呼びました。
また、お正月には女性達が働き、ゆっくり休むことができず、元日から続いた様々な行事がひと段落したこの時期は,女性がゆっくり休むことができる「女正月」とも言われていました。
「ワカトシ」「モチイ」「コドシ」等と呼ぶ地域もあります。
本来は旧暦の1月15日のことで、昔は正月を「大正月」と呼び、15日を「小正月」としていました。
この時期に,一年の邪気を祓う目的で,[小豆粥]等を食べる風習もあります。
小豆は赤い色をしていることから,「魔除けの効果がある」と信じられ,邪気を祓い,無病息災の願いを込めて,お粥にして食べられたと考えられます。
15日に食べる場合は、11日の鏡開きで細かく開いたお餅を入れることもあります。
鏡開きの餅は歳神さまに長寿を願いますので、お汁粉などにも入れて食べる風習があります。
小豆粥は15日の小正月の朝や、春の七草を取るのが難しい東北地方等で七草粥の代わりに食べられるお粥です。
1月7日の七草粥とまとめて行事として行っているいる地方などもあるそうです。
一部の地域では7日に七草粥を食べたら、15日に小豆粥を食べなくてはいけないと言われる地域もあります。
しかし、小豆粥を七草粥の代わりに食べる地域もあるので、どちらも食べなくてはならないという決まりはありません。
好みに合わせて食べるといいでしょう。
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