6月5日(土)19時52分、『二十四節気』の【芒種】で、「稲や麦など穂の出る穀物の種をまく季節」となりました。
6月の最初の節気は「芒種の節気」で、稲を植え付ける季節とし、五月雨が間断なく降り続き、農家の皆様は多忙を極める時季としています。
日で、主食の稲の成長が国にとって、最も重要なことなので、
この時期に神様に無事な稲の成長を祈る田植え神事(お祭り)を開催することが多いです。
また、稲だけに限らず、芒種の時期には多くの生命が息吹き、その命の輝きを私達の前に見せてくれる時期とも言えます。
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今回は【芒種の行事】についてです。
【3】【芒種の行事】
「芒種」は田植えの御神事を今に伝える一大イベントの時です!
❶田植えの祭
まだ、科学的なことが証明されていなかった頃は、洋の東西と問わず、「祈り」によって、様々なことを願い、祝い、お祓(はら)いしてきました。
「田植えの祭」は、大切に育んだ苗を田に植えながら、「雨に恵まれ、お日様に恵まれ、無事に稲穂が実りますように!」と、今年の豊作を田の神様に祈る祭事です。
六月の田植えの時期には、大阪の住吉大社で行われる住吉の御田植(神事)などをはじめ、壬生(みぶ)の花田植え(北広島町)、
秋保の田植踊り(宮城)、板橋の田遊び(東京)、三河の田楽(愛知)…が重要無形民俗文化財…として残り、全国各地で、田の神様にお祈りする祭りが行われています。
伝統的な日本の稲作には、〈労働〉と共に〈神事〉はもちろん芸能の意味もあり、春の祈年祭(きねんさい)と秋の新嘗祭(にいなめさい)は、稲の生育祈願と収穫感謝のお祭りです。
お田植え祭には,二通りあり、
一つ目は,年の初めに神社の拝殿などで種まきから収穫までを演じる予祝行事としての神事で,
もう一つは,早乙女たちが実際に田に入って,田植えをする神事があります。
①神祭りとしての田植え
かつて、田植えは、「実際の農作業」であると同時に、『豊作を祈る田の神の祭りという大切な神事』でもありました。
祭りのやり方は地域によって様々ですが,早苗の根を洗い清めて,【三束(三把の苗)】とし,榊や御幣(ごへい)のように、神の依り代(神が宿る所)にし,3つに束ねた稲の苗を神前に祭り、豊作を祈る点は,どこの田植え祭りにも共通しているのだそうです。
①田植祭りとは?…
五月女(さおとめ)たちが豊作を願って稲を植えます。
かつて農村では何軒かで「結(ゆい)」を組み、農作業で最も重要で神聖な「田植え」を行ったそうです。
特定の水田に祭場を設けて、田の神を迎え、その前で作業を行うことで、ある種、神聖な祭儀になります。
そこに込められているのは,「植えた苗がすくすく健やかに育ち,秋にはたわわに実りますよに」という切実な願いだったと思います。
西日本には古くから、田植えの際に拍子にあわせ、大太鼓や小太鼓、笛や鉦(かね)を打ち鳴らし、早乙女が田植歌を歌いながら早苗を植えていくという風習がありました。
そんないにしえからの習わしを今に伝えるのが、広島県山県郡北広島町壬生で、毎年6月の第1日曜日に豊作を願って行われる伝統行事「壬生の花田植(みぶのはなたうえ)」です。
⑴田植えの最初の日や、大きな田植えがある日には…
ⅰ田植えに先立って、田の神をお迎えする「サオリ」と呼ばれる儀礼を行います。
早朝から、ハレの装束を身に着けた田植え組の人達が、【田の神】を拝みます。
ⅱそれから、笛・太鼓・鉦(かね)・簓(ささら。先を細く割った簓竹と、のこぎりの歯のような刻みをつけた棒の簓子(ささらこ)とをこすりあわせて音を出す)などの楽器が奏でるお囃子にのって、声を合わせて田植え唄を唄いながら、苗を植えていきます。
実際に田に入って、〈田植えをする〉のは女性の仕事で、「早乙女」(さおとめ)と呼ばれました。
忌みごもりをして身を清めた早乙女達が一列に並んで田に入り、苗代で育てた稲の苗:「早苗」を本田に植えていきました。
早乙女は、揃いの新しい仕事着や笠、襷(たすき)を身に着け、飾り立てた牛に代掻きをさせることもありました。
ⅲ昼になると、田の神と一緒に御馳走を食べます(神人共食)。
ⅳそして、夕方までに一軒分の田を植え終えるのが普通でした。
ⅴ田植えの後、早乙女が田植え踊りを踊ったりすることもありました。
⑵【田植えが全て終わると】…田の神を送る「サノボリ」「サナブリ」「シロミテ」と呼ばれる行事を行いました。
ⅰ田植え始めと同じように神棚に洗い清めた三束の早苗をお供えし,農具を飾り、赤飯を炊いたり、餅を搗いたりして祝います。
ⅱ田植えに参加した人達を集め、早乙女を上座に据えて、祝宴が行われました。
家々の田植えが終わった時に行うのを「家さなぶり」、
村全体の田植えが終わって行うのを「村さなぶり」といったそうです。
現代では、これは、田植えの後の休日として扱われることが多いようです。
⑶なお、「サ」は古来、田の神を意味していました。
田植えが始まる前の「サオリ」は「さ降り」。
田植えが終わった後の「サノボリ」は「さ昇り」(さ上り)。
「サナブリ」は「サノボリ」の訛ったもの。
(当て字で「早苗饗」と書かれます。)
田植えが終わったばかりの田んぼが「早苗田(さなえだ)」。
「シロミテ」は「植(しろ)完了(ミテ)」(あるいは「代満て」)の意だ
とされます。
⑷田植えにまつわる季語には…田植歌・田植傘・田植時・田掻牛・田掻馬、早苗・早苗籠・早苗束・早苗舟・早苗饗(さなえぶり)・
早乙女…など、たくさんの季語が残されています。
「早乙女」は、田植えを行う女性のことを言います。
今ではこの苗字を持つ方もいらっしゃいますが、ご先祖が「早乙女」の役割をなさっていたのかもしれません。
お名前に早苗とつく方には、「実り多き人生を…」という願いが込められているのでしょう。
昔から今に伝わる想いが言葉に残されていることを感じましょう。
残すと言えば…「こども田楽」も欠かせません。
壬生の花田植が『田園絵巻』を彩り続けるための、継承・伝承が確実に行われていることがわかります。
⑸では、「田楽(でんがく)」とは何でしょうか?
壬生の花田植では子供達が「田楽舞(でんがくまい)」を舞う「こども田楽」も披露されます。
田楽舞は田の神に五穀豊穣を願う舞ですので、古くから存在しており、地域ごとに様々な形が残っています。
そして、その原型は「神楽(かぐら)」に始まり,神楽舞から田楽舞へ、田楽舞も現在残る様々な芸能へと発展しました。
なので、「田楽」は神事であり、舞踊であります。
②【各地に残っている御田植神事】
このように,田植えの際,私達の祖先は,毎年,稲が順調に実るように、田の神を迎えて豊作を祈りました。
こうした神祭りとしての田植えの伝統を伝える神事は、全国各地に残っています。
代表的なものを以下に挙げます。
⑴【御田植神事(住吉の御田植)】…【6月14日】、
大阪市住吉区の【住吉大社】の【神饌田を植える神事】。
大阪では「御田」(おんだ)と呼んでいます。
菅笠をかぶり、襷がけの早乙女が田植え唄を唄いながら,早苗を植えていきます。
その後、田舞い、住吉踊りなどが奉納されます。 儀式を略することなく、当時と同じ格式を守り、
華やかで盛大に行っている祭りとして、重要無形民俗文化財に指定されている、とのことです。
⑵【御田植祭り(伊勢の御田植)】…三重県,伊勢神宮の別宮:
【伊雑宮(いざわのみや)】で毎年【6月24日】に行われます。
一般に「磯辺の御神田(おみた)」といわれ、国の重要無形民俗文化財です。
勇壮な竹取り神事があり,その後,早乙女が簓や太鼓の囃子にのって、
にぎやかに田植えをし、その後、「踊込み」が行われます。
⑶【壬生(みぶ)の花田植(はなたう)え】…広島県山県郡北広島町(旧・千代田町)壬生で、【6月第1日曜日】に,豊作を願って行われる伝統行事で、「囃し田」(はやしだ)とも呼ばれます。
非常に華麗で高度に芸能化された行事とされ、国の重要無形民俗文化財にまた、
2011(平成23)年11月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に指定されています。
この花田植では,きらびやかな装具をつけた飾り牛達,菅笠(すげかさ〉をかぶり、絣(かすり)の着物に赤い帯や襷(たすき),腰巻で着飾った早乙女達、見事なバチさばきを見せる囃子手等、そのいずれもが、新緑の山、田んぼの水面にマッチし、初夏の一大『田園絵巻』ともいえる稲作のハレの日を彩っています。
田植えの際には、音頭取りが打ち合わせるささらの拍子にあわせ,大太鼓や小太鼓、笛や手打鉦で囃し、早乙女が田植歌を歌いながら植えていくという風習がありました。
サンバイ(田の神)を祭って、無病息災と豊穣を願う農耕儀礼であるとともに、重労働である田植作業を楽しくこなすための工夫でもあります。
ⅰ田に水を引いて、【田の神を招く儀式】をした後、牛の背に金色の鞍を置き、幟や花笠を立て、「まんが」(馬鍬(まぐわ)の訛)という田をならす農具を引かせて、代掻きをします。
ⅱ菅笠をかぶり、着物に帯をしめ、手甲をつけた【早乙女】達は,苗取りをしてから、田の中に一列に並び、田植えをします。
ⅲ初めに花田植えの指揮者「さんばい(田の神)」が、簓を両手に持って打ち、田植え唄の上の句を唄い、続いて早乙女達が下の句を唄います。
一区切り唄い終わるたびに、早乙女達は右手で3~4本の苗を田に植えていきます。
その時、早乙女の後ろにいる子供達が太鼓や笛、鉦で「田楽舞(でんがくまい)」を舞う「こども田楽」を囃(はや)します。
やがて、田植えの行事は大勢の人々を集めて,一層華やかになり,
代掻きの牛は造花で飾った花鞍をのせ、早乙女らは赤い襷や腰巻で着飾り、ハレの日を演出し、その華やかな様子から、花田植の名が付いたと言われています。
「花田植」と呼ばれる田植え行事は、六月中旬に、中国山脈が走る
鳥取・島根・広島・山口地方の山地の村々で行われていました。
このような行事は、昭和の初め頃までは各地で見られましたが,現在では、壬生の花田植えなどいくつかが残されているだけなのだそうです。
⑷その他にも、全国の寺や神社、領田などでも豊作を祈念する行事「御田植祭」が各地で執り行われています。
・山形県鶴岡市 気比神社 「お田植え祭り」
・福島県 八槻都々古別神社 「御田植祭」
・千葉県 香取神宮 「御田植祭」
・京都府 伏見稲荷大社 「御田舞(おんだまい)」
・岡山県 吉備津彦神社 「御田植祭」
・熊本県 阿蘇神社 「御田植神幸式 (おんだ祭)」
「芒種」という一見地味な節気に、こんなにたくさんの歴史と文化がつまっているとは…本当にびっくりですね。
私達がお祭り以外で「芒種」を祝うことは、日々の食事を丁寧に、ありがたく、美味しく、いただくことだと思います。
田畑を耕し、実らせてくれた人々に、食事を用意してくれた人に…「いただきます」と「ごちそうさま」の感謝の心を忘れずにいたいですね。
「芒種」はそんな節目です。
今年も、お日様と雨に恵まれて五穀豊穣でありますように…。
❷お勧め行事・イベント
芒種は梅雨である時点でなかなか外に出かけにくい時期ですが、
日本中では様々な行事・イベントが行われていますので、ご紹介します。
①「赤玉杉池まつり」…6月、赤玉神社(新潟県佐渡市)…閲覧料:無料…様々な舞や踊りが披露されます。
鹿のカップルを表した小鹿舞や花笠をかぶった幼児の花笠踊り
などが行われて心を和ませてくれます。
②「あやめ・ラベンダーのブルーフェスティバル」(6月いっぱい、
埼玉県久喜市:菖蒲総合支所庁舎周辺) 6月上~中旬までが
あやめ(花菖蒲)、中旬~下旬までがラベンダーが見頃で、6月を楽しむことができるのが特徴です。
近くにいるだけでもあやめやラベンダーのいい香りが漂い、心を落ち着かせてくれます。
③その他…YOSAKOIソーラン祭り・チャグチャグ馬コ・荏原神社天王祭・日枝神社山王祭
④「父の日」:6月の第3日曜日…アメリカで,1909年に男手ひとつで育てられた女性が、「父への感謝を」と提唱したのが始まりで、日本に伝わったのは、1955年頃ですが、
一般的な行事として広がったのは1980年代といわれています。
母の日が日本に伝わったのが1947年ですが、母の日(花:カーネーション)がメジャーなのに比べて、父の日(花:バラ)はどちらかといえばマイナーな行事なようです。
⑤プロポーズの日:6月第1日曜日…特に女性の方は気にかけている方が多いと思いますが、「6月に花嫁になると幸せになれる」
という言い伝えが日本で広まっていますよね。
これに合わせて全日本ブライダル協会では、6月の第1日曜日を「プロポーズの日」と定めています。
❸稽古始の日
楽器や舞踊などの伝統芸能の世界では、この芒種にあたる6月6日が「稽古はじめ」といわれています。
指を折って数を数えると、「6」の時、ちょうど小指を立てますね。
なので「子が立つ」と縁起の良い日とされ、6歳の6月6日に初稽古を始めるのが良いとされてきました。
“習い事を始めるなら、6月6日から始めると上達しますよ。”
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このように日本中ではいろいろなイベントや行事がありますが、先ほどもあげたように梅雨に入っていることが多く、体調を崩しやすい時期でもあります。
健康でいることが人生を楽しむための必須条件でもありますので,是非皆様もお身体にはお気を付け下さいませ。
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